• 院長

運転拒絶装置



高齢化に伴い、白内障が進んでいるにもかかわらず

自動車の運転を続けている方が増えています。

先日も視力が0.2しか出ないのに毎日運転している方が受診されたりして

背筋が凍る思いをしました。

あるいは「もう50年以上も無事故無違反だからね、僕は大丈夫」なんて、

今後も事故を起こさないという何の根拠にもならないのに自慢される80歳台後半の方とか。

「頼むからこのまま無事故で行ってくれ~」いつも僕は祈るような気持ちです。

 眼科での視力検査は基本的に視力表から5メートル離れて行います。

5メートルを取れない狭いクリニックでは3メートルで測定するところもあります。

また特殊な視力表で1メートルちょっとの距離で測ることのできる機械もあります。

機械のスクリーンを覗くと5メートル離れたところに指標が浮かんでいるように見えるのです。

これを自動車に搭載することを思いつきました。

運転免許を取得するためには両眼で0.7が必要です。

そこで運転席に乗り込み、エンジンをかける前に毎回視力の確認をするのです。

おっとその前に免許証を確認しておきましょう。

免許を失効したまま何十年も軽トラを運転していたおじいちゃん、

なんて話もたびたび聞きますから。

「アナタノ免許証ヲ読ミトリマス。バックミラーニカザシテ下サイ」

「はい」

「有効期限ガ切レテイマス。運転ハデキマセン」

「ええ~っ」

免許証をクリアしたら視力検査です。

「スピードメーターノ右横ノディスプレーニ現レル指標ノ向キヲ次々ニ答エテクダサイ。デハ始メマス」

「右、上、下、左、右」

「不正解デス。運転席カラ降リテスグニ眼科ヲ受診シテクダサイ」

0.7まで見えない人も運転を拒否されます。

また最近認知症が疑われる高齢者の運転する乗用車による、

痛ましい事故が相次いでいます。

高齢化の進む日本では今後もこういった事故が増加してゆくかも知れません。

認知機能検査は75歳以上の方で免許の更新ごとに行われているだけで、不十分です。

毎年行うべきだ、など色々な意見が出ていますが、

僕は車に乗る度に行うのがいいと思います。

認知症では見当識(けんとうしき、時や人、場所などのこと)

障害が出るといわれています。視力をクリアした人は次は見当識のチェックです。

「今日ノ日付ト季節、ソシテ現在地ガドコカ答エテクダサイ」

「今日は○月○日、季節は○、ここは×××です」

「違イマス。降リテクダサイ」

アクセルとブレーキを踏み間違える事故が多く起きています。次は踏み間違えテストです。「アクセルトブレーキ、次々ニ言ワレタ方ヲ素早ク踏ンデ下サイ」

「はい」

「ブレーキ、ブレーキ、アクセル、ブレーキ、アクセル」

「不正解デス。降リテクダサイ」

高齢者に限りませんが、飲酒運転による事故も後を絶ちません。

そこで呼気中アルコール濃度検査もやっておきましょう。

「ハンドルノ中心ニ向カッテ息ヲ吐キカケテクダサイ」

「ハーッ」

「マダ酒ガ残ッテイマス。降リテクダサイ」

ここまで順調にクリアできたらいよいよエンジンをかける番です。

が、その前に心配なことがありました。

「家ノ戸締リハシマシタカ?」

「あ、いっけね」

「降リテクダサイ」

心配事は他にもあります。

「ガスノ元栓ハ閉メマシタカ?仏壇ノロウソクノ火ハ消シマシタカ?」

「すっかり忘れてた」

「降リテクダサイ」空き巣と火事を未然に防ぐことができましたね。

さあ、いよいよ出発です。おっとその前にもう一つ聞いておかなくちゃ。

「今日ハドチラマデオ出カケノ予定デスカ?」

「銀行だけど」

「モシカシテ息子サンニ送金スルトカ、税金ノ還付ヲ受ケルトカ」

「そうだよ。息子にお金を頼まれて」

「ソレハ詐欺デス。警察二電話シマス。ソノママココデ待機!」

「え~」振り込め詐欺も未然に防ぐことができました。素晴らしい。

「なんだかもうすっかり疲れちゃった。今日はもう運転するのやめるよ」

それが一番ですね。車を動かさなければ絶対に事故は起きませんから。

代わりに公共の交通機関を充実させます。

バスの自動運転化を積極的に進めるのです。これで人件費を抑えられます。

バスの路線は決まっていて、走るルートは毎回変わらないから

自動運転化は比較的簡単なハズです。

現在よりうんと小回りのきく小さな電気バスを無人でたくさん走らせましょう。

スマホの専用のアプリを開き目的地を声に出して言うだけで目的地に最も近いバス停と

そこまでの行きかたを音声で教えてくれます。

バスに乗り込むと

「次の△△のバス停で降りて○分後に到着する××行きのバスに乗り換えください」

と、迷うことなく目的地まで行けるシステムです。

アプリで決済するので小銭を持ち合わせる必要はありません。

 自家用車に搭載するこの器械、実用新案の登録を済ませました。

すでにドイツの某高級車メーカーや国内の大手自動車メーカーから引き合いも来ていて

一気に広まりそうな気配です。

事故や事件、犯罪が減ってくれれば開発者としてこんなに嬉しいことはないですね。

え?どうせまた大ボラ吹いているんだろうって?

 フフフ、その通り。よく分かりましたねえ。大分皆さん鍛えられてきましたね。

そうやって何でも鵜呑みにせず、疑ってかかる注意深さが詐欺などに引っかからないようにするために大事、ということです。

でもこの程度の器械なら現在の技術で簡単に実用化できるものです。

近い将来実現しそうだと思いませんか?僕は本気でいいアイデアと思うんだけどな。

おしまい。




 

院長コメント

「先生から運転はやめるように言ってくださいよ」

しばしば高齢の患者様のご家族から頼まれます。実際免許証の返納を勧めても全く聞く耳を持たず、そんな方がたくさんいらっしゃいます。周りのご家族の心配は察するに余りあります。

そんな高齢者の自尊心を傷つけずに運転を諦めさせる唯一の方法は自分で車を動かすことができない、それに尽きると思います。今の車はメーカーを問わず、免許証を持っていようがいまいが、誰でも彼でも操作方法さえ分かれば動いてしまうのが問題だと思うのです。

車を始動させるための様々なハードルをクリアしなければ1ミリも動かない車ばかりになれば、連日繰り返される高齢者による悲惨な事故は激減すること間違いなし、と確信しています。自動車メーカーの方には是非検討をお願いしたいと本気で思っているんですが、いかがでしょうか?